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停留精巣(男児) |
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◆ どのような病気でしょうか?
精巣(=睾丸と同じ)が正常の下降経路の途中で停留して陰嚢底部に降りていない状態を停留精巣といいます。
正常の精巣は腹腔内で発生し、胎児期の3か月目(妊娠3か月)に下降を開始します。そして胎児期の8〜9か月目(妊娠9か月頃まで)には腹腔から陰のうまで下降し、出生時には陰のう内に位置するようになります。
精巣下降のメカニズムは完全に解明されてはいませんが、胎児期のホルモン分泌の異常や精巣下降を誘導する精巣導帯の異常が関係しているのではないかと考えられています。
発生頻度は新生児期には4〜7%、1歳児に1%強とされています。 |
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◆自然には治ることはあるでしょうか?
発生頻度が生下時と1歳時では異なるように、生まれた時に停留精巣の状態であっても生後6か月頃までは自然に下降する事があります。しかしそれ以降はほとんど期待できません。
従って、1歳代の前半に治療するのが望ましいということになります。
◆治療はなぜ必要でしょうか?
陰嚢内にある正常の精巣は体から離れているために、体温よりわずかに低い温度に保たれています。停留精巣では体温の影響を受けるため精巣の発育不良や精子産生能の低下がおこり不妊の原因になると考えられています。さらに停留精巣では精巣の悪性腫瘍(がん)ができやすいことも問題です。停留精巣における腫瘍発生の原因は不明ですが、一般人口に比べ発生頻度が数倍高いと報告されています。その他停留精巣の解剖学的特性から、外傷をうけやすい、鼠径ヘルニアや精索軸捻転をおこしやすいということも言われています。また陰嚢内が空であることの心理的なマイナスを指摘する人もいます。
以上から治療が必要であり、治療の目的は@妊孕性(子供を作る能力)を改善させる。A腫瘍が発生しても発見を容易にする。B鼠径ヘルニアの発生や精巣捻転症・外傷を予防する。C陰嚢形態が正常化することによる心理的好影響を与える。ことです。
◆ 治療の方法は?
精巣固定術という手術療法が治療の中心となります。ホルモン療法という方法もありますが有用性が低く、程度の強い停留精巣では効果がほとんど期待できないため我が国ではほとんど行われていません。(副作用が少なく安全であるため一部の停留精巣に限定的に行われることがあります。)そのため手術療法が停留精巣に対する治療のゴールドスタンダードとされています。
なお、触診しても触れない精巣(非触知精巣)のうち、検査でも鼠径部〜陰嚢部に精巣を発見できない場合は、腹腔鏡検査(手術)で精巣を確定することになります。
精巣が陰嚢内に触れない場合は専門医(小児泌尿器科医)の診察が必要です。 |
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2024年9月更新 |
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