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泌尿器腫瘍 |
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泌尿器腫瘍について |
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泌尿器科領域の中で、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、尿道からなる「尿路」、及び精巣、前立腺などの「男性生殖器」に発生した腫瘍をまとめて「泌尿器腫瘍」と呼びます。
1.腎臓
腎臓は血液によって運ばれてきた体内の老廃物を濾過して、不必要なものを尿として排泄する臓器です。この腎臓に発生するがんは大きくなって血尿、お腹の痛みや腫れで見つかることもありますが、最近では人間ドックやがん検診などで行われている超音波検査や他の病気で行われたCTなどで偶然発見される患者さんが増えてきています。そのような場合、見つかる腫瘍は小さく、症状もほとんどありません。
腎がんの外科的な治療として、腎臓を全て摘出する根治的腎摘除術や腎臓の働きを出来るだけ温存する手術(腎部分切除術)が行われます。最近は、腹腔鏡下手術やロボット支援手術で行う低侵襲手術(傷が1cm程度であり、術後の痛みが小さい)も広く行われるようになっています。
小さな腫瘍(4cm以下)で手術が困難だったり手術を望まない患者さんの場合、無治療で経過観察を行ったり、ラジオ波による焼灼術や凍結療法、放射線治療といった体の負担の少ない治療もあります。
腎がんに対する薬物治療として、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬剤が用いられます。
2.腎盂・尿管・膀胱 (尿路)
腎盂、尿管、膀胱は「尿路(尿が流れる通り道)」と呼ばれ、その内腔は尿路上皮という粘膜で覆われています。
この尿路上皮細胞に発生したがんを尿路上皮がんと呼び、その発生部位により腎盂がん、尿管がん(まとめて腎盂・尿管がんや上部尿路上皮がんということもあります)、膀胱がんと表現します。
特徴的な症状としては、痛みがなく目で見て赤い尿(無症候性肉眼的血尿)が挙げられますが、膀胱炎の併発や結石があると頻尿や痛みなどの症状がみられます。また、喫煙者は非喫煙者に比べて、膀胱がんの発生が2〜3倍ほど高いようです。
この尿路上皮がんは大きく分けて2つのタイプがあり、筋層非浸潤性がんと筋層浸潤性がんに分かれます。筋層非浸潤性がんは根が浅く筋肉の層までは達していません。一方、筋層浸潤性がんは根が深く筋層以上に達しており、転移することがあります。
腎盂・尿管がんに対する治療は原則的に腫瘍のある腎臓および尿管を摘除(腎尿管摘除術)しますが、腫瘍が小さい場合や腎臓が片方しかない場合は、レーザーなどを利用した内視鏡手術も行われています。
筋層非浸潤性の膀胱がんの治療は内視鏡にて切除可能ですが、約40%の患者さんで腫瘍の再発がみられます。そのため、手術後に再発予防のため抗がん剤やBCGなどを膀胱内に注入することがあります。
筋層浸潤性の膀胱がんの治療は、膀胱を取り除き、腸などを利用して新しく尿路を作る手術(膀胱全摘および尿路変向術)が標準的な治療となります。尿路変向術には以前より行われてきた集尿袋を必要とする失禁型の回腸導管や尿管皮膚瘻などがありますが、最近では小腸などを利用した自然排尿型の膀胱再建術が行われることもあります。また、放射線治療を行うこともあります。
尿路上皮がんに対する薬物治療として、抗がん剤の他に免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬剤や抗体-薬物複合体と呼ばれる新しい薬が用いたられるようになっています。
3.前立腺
前立腺は男性の精液の一部をつくる臓器であり、正常成人では栗の実ぐらいの大きさで、尿がたまる膀胱の出口のすぐ先にあり、尿道を取り囲むように存在します。
前立腺がんはこの前立腺から発生するがんで、壮年期以降に多い高齢者のがんです。その頻度は人種差・地域差が大きく、欧米で高くアジアでは低いのが特徴でしたが、日本では人口の高齢化、生活習慣の変化などから、近年患者さんの数が増加しています。
前立腺がんの初期にはほとんど症状がありません。最初に自覚する症状は、尿の勢いが弱い、排尿後に尿が残った感じがする、夜間にトイレに起きるなど排尿に関係する症状が多いのですが、良性の病気である前立腺肥大症による症状と同じような症状です。さらに進行すれば、血尿が出たり、骨に転移して頑固な腰痛などがでてくることがあります。前立腺がんの早期発見のためには、50歳を過ぎたらPSA検査をお受けになることをお勧めします。
前立腺がんの診断は、肛門から指を入れて前立腺をさわって調べる直腸診、PSA検査(血液検査)、経直腸的前立腺超音波検査、MRI検査を行い、がんの疑いがあれば前立腺生検を行います。特にPSA 検査は、症状の全くない早期の前立腺がんのスクリーニングとして有用で、採血だけですむので患者さんの負担も少なくてすみます。
前立腺生検は麻酔をしたあと、超音波で位置を確認しながら直腸または会陰(陰嚢と肛門のあいだのまたの部分)から細い針で前立腺の組織を少し取る検査です。近年では、MRI検査ががんの検出に有用であることがわかり、さらにMRIの画像と超音波の画像を融合させて精度を高めた前立腺生検も行われるようになってきました。
前立腺がんはがんの広がり(転移の有無など)や悪性度、患者さんの状態に応じて治療を行います。おとなしいがんと予想されるような場合には治療をせずに定期的な検査で経過をみる(監視療法)こともあります。一方、根治的な治療として前立腺を摘出する根治的前立腺摘除術や放射線治療があります。最近では、腹腔鏡下手術やロボット支援手術で行う低侵襲手術、放射線が密封されたカプセルを前立腺に埋め込む小線源療法や腫瘍の形に適した放射線治療を行う強度変調放射線治療(IMRT)、重粒子線や陽子線を使った粒子線治療など、新しい治療法が行われるようになっています。
前立腺がんに対する薬物治療として、男性ホルモンの働きを抑えるホルモン療法や抗がん剤、放射線医薬品(がんに放射線を放出する薬)を用いた治療を行います。
4.精巣
精巣腫瘍は青壮年層(20〜40歳代)によく見られるがんであり、精巣にしこりが触れたり、全体に硬く腫れてきたりします。
精巣腫瘍の検査として、触診や超音波検査、CT検査、PET検査などの画像検査、血液検査にて腫瘍マーカーを測定します。
精巣腫瘍の治療として、鼡径部(足の付け根)より腫瘍がある側の精巣を取り除きます(高位精巣摘除術)。リンパ節などに転移がある場合は、放射線治療をしたり、抗がん剤治療をしたりします。これらの治療後に、転移があった部分を手術で取り除くこともあります。 |
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2024年9月更新 |
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