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腎腫瘍
 腎臓の悪性腫瘍には、主に成人に発生する腎がんと小児に発生するウィルムス腫瘍があり、さらにまれな腫瘍として肉腫があります。腎がんの発生頻度は、人口10万人あたり男性4.9人,女性1.8人と男性に多い傾向にあります。また、腎臓には腎血管筋脂肪腫などの良性の腫瘍が発生することもあります。

症状

 腎がんの初期症状はあまりありません。そのため早期発見が難しい種類のがんでしたが、最近では超音波検査やCT検査などの普及によって症状のなく初期の小さな腎がんが見つかることが増えています。 大きな腎がんでは、血尿、お腹の痛みや腫れなどの症状がみられることがあります。

診断

 超音波検査やCT検査、MRI検査などを行います。これらの検査によって悪性腫瘍か良性腫瘍の判断をします。判断が難しい場合などは、針生検という検査で診断を行ったり、手術で摘出して最終的な診断を行うこともあります。

病期(ステージ)

 腎がんの病期は、「腎癌取り扱い規約 2020年12月 第5版」では次のように分類されています。

T-原発腫瘍
 TX   原発腫瘍の評価が不可能
 T0   原発腫瘍を認めない
 T1a  最大径が4cm以下で、腎に限局する腫瘍
 T1b  最大径が4cmを超えるが7cm以下で、腎に限局する腫瘍
 T2a  最大径が7cmを超えるが10cm以下で、腎に限局する腫瘍
 T2b  最大径が10cmを超えて、腎に限局する腫瘍
 T3a  肉眼的に腎静脈やその他区域静脈に進展する腫瘍、
または腎周囲脂肪に進展するがゲロタ筋膜を超えない腫瘍
 T3b  肉眼的に横隔膜下までの下大静脈内に進展する
 T3c  肉眼的に横隔膜上の下大静脈内に進展する、もしくは大静脈壁に浸潤する腫瘍
 T4  ゲロタ筋膜を超えて浸潤する腫瘍

N-所属リンパ節
 NX  所属リンパ節の評価が不可能
 N0  所属リンパ節転移なし
 N1  所属リンパ節転移あり

M-遠隔転移
 M0  遠隔転移なし
 M1  遠隔転移あり

治療

 腎がんの外科的な治療として、腎臓を全て摘出する根治的腎摘除術や腎臓の働きを出来るだけ温存する手術(腎部分切除術)が行われます。小さい腎がんに対しては腎臓を全部摘出せず、腫瘍とともに腎臓の一部のみを摘出(腎部分切除)する手術が行われています。このような手術を受けた場合でも再発率、生存率については差がないことが報告され、最近ではさかんに行われるようになっています。最近は、腹腔鏡下手術やロボット支援手術で行う低侵襲手術(傷が1cm程度であり、術後の痛みが小さい)も広く行われるようになっています。
 小さな腫瘍(4cm以下)で手術が困難だったり手術を望まない患者さんの場合、無治療で経過観察を行ったり、ラジオ波による焼灼術や凍結療法、放射線治療といった体の負担の少ない治療もあります。
 腎がんに対する薬物治療として、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬剤が用いられます。
 下記に病期の段階別の初期治療法を示します。最近は進行期の腎癌に対しては手術だけではなく、手術と薬物療法を組み合わせて治療を行う機会が増えています。

病期I〜II   T1、T2転移なし
根治的腎摘除術あるいは腎部分切除術
病期III  
T3a 転移なし
  根治的腎摘除術
T3b,c 転移なし
  根治的腎摘除術+下大静脈内腫瘍塞栓摘除術
リンパ節転移あり
  根治的腎摘除術(+リンパ節郭清術)
病期IV  
T4 転移なし
  (可能ならば)根治的腎摘除術
他臓器転移あり
  上記に加えて臨床的単発の転移であれば転移巣の合併切除
または全身療法(分子標的治療、免疫チェックポイント阻害薬などによる薬物療法や臨床試験)

治療成績と予後

 最近、腎がんはT2までの早期の段階で、手術を行えば完治が望めることが多いです。しかし、T3以上や転移がある場合は手術だけでは治療が不十分なことが多く、薬物を用いた治療も行うことがあります。また、腎がんの中には10年以上経って再発する場合もあり、通常のがんに比べて長期間の経過観察が必要です。
2024年9月更新
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