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尿路結石症
  尿路結石症について

1. どんな病気?

尿の通り道(尿路)に結石がある状態が尿路結石症です。
結石の存在する場所によって、上部尿路結石症(腎結石、尿管結石)、下部尿路結石症(膀胱結石、尿道結石)に分けられます。
尿路結石の多くを占めるカルシウム結石は多因子疾患の範疇に含まれます。カルシウム結石の明確な遺伝子異常の同定には至っていませんが家族性発生の報告1)や、5年で50%程度といわれる高い再発率などからも、遺伝要因の存在下に食生活、生活習慣などの環境因子が重なり発症すると考えられています。
また、薬剤も尿路結石の原因となることがあり、全尿路結石の1〜2%を占めます。そのため、結石の原因となる可能性のある薬剤を認識し、注意深い監視、適切な予防・治療を実施することが重要です。
また2015年の調査によると、その罹患率は1965年の3倍に増加しています (図2)。
これらの事より、日本人男性の7人に1人、女性の15人に1人が一生の間に一度は尿路結石症に罹患する計算になります。
   
 
 
図1 結石の介在部位による名称1)
上部尿路結石症(腎結石・尿管結石)
下部尿路結石症(膀胱結石・尿道結石)
   
 
 
 図2 1965〜2015年における尿路結石症罹患率の変化2)
   
  2. どんな人が尿路結石になるのですか?その原因は?

 現在、我が国において、尿路結石症の殆どは上部尿路結石であり、その多くはカルシウム含有結石と言われています。前述のように尿路結石症は一般的な病気として知られている半面、その原因については依然不明の点も多く、再発予防にも明確な方法がないのが現状です。
 年齢別の尿路結石罹患率については、男性は50歳代にピークを認め、女性は60歳以降に増加傾向が認められます(図2)。原因としては、偏った食生活や生活様式の欧米化、不規則な日常活動、生活習慣病などが挙げられます。
 一方、下部尿路結石症の原因としては、上部尿路から下降した結石が排石できずに膀胱内で成長したものや、寝たきりなどで尿道に管(カテーテル)を留置され、それが核となって結石が形成されたケースが多いようです。いずれも排尿に関する基礎疾患が存在しており、結石成分も尿路感染に伴う感染結石や尿酸結石が多い傾向にあります。

3. どんな症状?

  尿路結石症の症状は結石の介在部位によって異なります。上部尿路結石症の腎結石の場合、背中の鈍痛や血尿(顕微鏡的血尿)が主な症状である事が多く、無症状の事もあります。検診の際、超音波検査で偶然発見されるケースも多く認められます。一方、結石が尿管に下降して尿管結石となった場合には、突然の背中や腹部(側腹部含む)の激痛や肉眼的血尿などの症状が認められます。また悪心、嘔吐(吐き気)、冷汗などを伴うこともしばしばあり、時に急性腹症としてショック状態に陥り、救急車で搬送されるようなケースもあります。更に結石が膀胱近くまで下降してくると、側腹部痛や下腹部痛と共に尿意切迫感(急に尿意を感じて我慢できない)、残尿感(何度も排尿してもスッキリしない)といった症状を伴う様になります (図3)。また一般的には結石のサイズと痛みの程度は比例しないとされています。
 下部尿路結石症においては、膀胱結石では排尿時の膀胱刺激症状(痛みや頻尿など)と肉眼的血尿が主な症状です。時に結石が尿道に嵌頓して尿道結石となる場合もあります。尿道結石の場合、多くは結石を排出する際の尿道の痛みや違和感を認めますが、結石が尿道に嵌頓すると、尿閉という尿が出せなくなる状況になるケースもあります。また尿道に管(カテーテル)が留置されている場合には、これらの症状が乏しいため発見が遅れるケースがあり日頃より尿の性状を観察しておく事が重要です。
  更に最近では、高齢者・糖尿病・長期臥床などの人に尿路結石症を発症するケースが増えています。この様な人は元々感染に対する抵抗力が低下しており、容易に腎盂腎炎などの尿路感染症、更には敗血症に至り生命を脅かすような重篤な状態となるケースも増えています。
   
 
 
図3 上部尿路結石の介在部位による痛み3)
   
 

4. どんな検査がありますか?

一般的に次のような検査を行って診断します。

(1) 尿検査:血尿(肉眼的血尿、顕微鏡的血尿)や尿路感染症の有無を調べます。尿路結石症の診断において必須の検査ですが、全く異常所見を認めない場合もあります。 
 
(2) X線検査:腎臓から膀胱まで含めた腹部単純(KUB)を撮影し、結石の存在部位、大きさなどを確認します(図4)。単純撮影だけではっきりしない場合や、レントゲンに映らない結石(尿酸結石など)の場合、造影剤を用いた尿路造影検査をする事があります。
   
(3) 超音波(エコー)検査:レントゲンに映らない結石や腎臓などの状態を見るのに適しています。非侵襲的検査であり、尿路結石症の診断において必須の検査です(図5)。
   
(4) CT検査:最近では腹部をくまなく検査できるマルチスライスCTが簡単に撮影できるようになり、尿路結石症の診断において重要な検査となっています。尿路結石の診断を容易にしているだけではなく、多臓器の除外診断もできる事より広く行われる様になっています(図6)。
   
 
   
図4 KUBによる尿路結石陰影3)   図5 超音波検査による尿管結石と水腎症3)
     
図6 CTによる左尿管結石画像3)    
   
  5. どんな治療がありますか?

治療法には、薬物で治療する保存的治療と手術で治療する外科的治療があります。
 

<保存的治療>

(1) 尿管結石が10mm未満の場合自然排石する可能性がありますので、適切な疼痛緩和を行い、1ヶ月程度は自然排石するまで経過観察することが可能です。

(2) 痛みに対しては痛み止めの内服や坐薬を使用します。痛み止めを使用しても痛みが治まらない場合や結石性腎盂腎炎が疑われる場合は尿管ステントを挿入することがあります。

(3) 結石が嵌頓し自然排石が困難と判断される場合や激しい痛みが続く場合、結石の部位やサイズに関わらず外科的治療が行われるケースがあります。

<外科的治療>

10mm以上の結石や10mm以下の結石でも同じ場所から動かない結石は積極的治療の適応とされます。尿管結石を放置した場合腎臓の働きが低下したり尿管にダメージが生じてしまうことがあるからです。無症状の腎結石や、外科的治療にリスクを伴う人では経過観察するケースもあり、個々の患者さんの状態をみて判断します。

(1) 体外衝撃波結石破砕術 (ESWL):衝撃波発生装置から発生される衝撃波で体外から結石を破砕し、小さな破砕片として結石の排出を促す治療です(図7,8)。 この治療のメリットは術前に麻酔をすることなく外来治療も可能な点ですが、結石の介在部位によっては破砕が困難であったり、結石の破砕が不十分で自排石しないケースもあります。

(2) 経尿道的尿管結石砕石術 (TUL):尿管鏡という細いカメラを尿道から挿入し、尿管内の結石を直接確認し、ホルミウムレーザーを当てて砕石します。麻酔と短期間の入院が必要となりますが、ESWLが苦手な大きな結石や硬い結石、多発する結石に対しても有効であり確実性の高い治療です。
近年尿管鏡の細径化や画像の進歩に伴い導入する病院が徐々に増えており、その頻度は増えています(図9,10)。

(3) (3) 経皮的腎砕石術 (PNL):背中から腎臓に内視鏡の通り道を作成し、直接腎臓内の結石を破砕する治療法です。麻酔科に行うため入院が必要で、手術侵襲は最も大きくなりますが、他の治療法(ESWL,TUL)では治療が困難な大きな腎結石を比較的短時間で治療をすることができます(図11)。
近年では細い内視鏡を使用し、腎臓の穴を極力小さくすることにより腎臓からの出血や手術侵襲も減少傾向にあります。

(4) 経皮経尿道的結石砕石術(TAP:TUL Assisted PNL):TULを併用してPNLを同時に行う治療法です。TULによる細かな操作とPNLによる結石の除去効率が最大のメリットです。あらゆる位置と大きさの結石に対応できます。近年は治療(結石除去)効率の良さから多くの施設で導入され始めています。ただし、同時に2つの手術を行うために複数の内視鏡を操作する必要があり、複数の術者が必要であるなどの問題があります。

(5) 開腹手術:約20年以上前では尿路結石に対する外科的治療の一つとして行われていましたが、現在は内視鏡の進歩などによりほとんど行われません(図12)。極めて稀なケースに行われる程度です。ただ近年では腹腔鏡手術の技術が飛躍的に進歩しており、以前では開腹手術で治療していたような症例においても腹腔鏡手術での低侵襲治療が可能となっています。
   
 
 
図7 体外衝撃波結石破砕術の原理1)   図8 超音波にて結石に焦点を合わせ治療中の画像3)
     
 
図9 硬性尿管鏡を用いたTUL1)   図10 バスケット鉗子にて破砕片を採取1)
     
 
図11 PNLによる腎結石の砕石1)   図12 開腹による腎切石術1)
   
  6. 予防策はありますか?再発の予防策は?

尿路結石症は再発しやすい病気ですので再発予防が重要となります。
再発予防のポイントは、結石になりやすい病気がないか調べることに加え以下の3つの点が重要となります。

 
(1) 水分をしっかりとる
十分な水分摂取は尿路結石の再発予防の基本です。食事以外に2L/日以上の飲水を促す指導が推奨されています。

(2) 食生活の改善
食事から摂取されるシュウ酸やプリン体は結石形成を促進させます。そのため食事からとりすぎないように注意することで再発を防止できる可能性があります。 シュウ酸を多く含む食物はほうれん草、タケノコ、ブロッコリー、カカオ、お茶等、プリン体を多く含む食物は肉類、魚介類、干物、ビール等です。
また、結石形成を抑制するためカルシウムや食物繊維、マグネシウムの適量摂取も推奨されています。
食事習慣の面では朝食の欠食を避け、3食のバランスを考慮し、遅い時間での夕食を改善することが望ましいと言われています。

(3) 身体活動の促進
尿路結石症は生活習慣病と深い関わり合いがあることから適度な運動が推奨されます。

尿路結石の再発リスクの高い患者には飲水・食事指導に加え薬物療法が考慮されます。
結石成分分析、24時間尿化学検査、血液検査の結果に基づき、適切な薬剤が選択されます。
   
  参考文献
 
   
1) 系統看護学講座 専門11 成人看護学[7] 腎・泌尿器疾患患者の看護 (医学書院)
2) 日本尿路結石症学会(編) 尿路結石症のすべて (医学書院)
3) 新 図説泌尿器科学講座 第2巻 尿路結石症, 尿路感染症, 炎症疾患 (メジカルビュー社)
4) 尿路結石症診療ガイドライン 第3版日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡学会・日本尿路結石症学会(編) (金原出版)
2024年9月更新
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