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間質性膀胱炎・膀胱痛症候群−頑固な頻尿や膀胱の痛みで悩んでいませんか?−
【間質性膀胱炎・膀胱痛症候群とは】

頑固な頻尿、トイレに行ってもすぐにまた行きたくなる、尿をがまんすると下腹部が痛いなどの極めて不快な症状をきたす慢性的な病気です。症状は過活動膀胱(過活動膀胱の項をご参照下さい)や細菌感染で起こる急性膀胱炎と良く似ていますが、全く別の病気です。膀胱粘膜の表面を保護するバリアの部分が何らかの原因で障害されて起こる病気で、尿の成分が膀胱粘膜に滲みこむために少し尿がたまっただけで尿に行きたくなったり、膀胱や尿道の不快感や痛みが起こります。

【間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の特徴】

女性に多く(女性:男性の比率 8:2程度)、典型的には尿がたまると膀胱に痛みを感じますが、痛みを感じる前に早めにトイレに行っている方も多く、1日20回から30回もの頻尿という方も珍しくありません。
「膀胱炎」という名前がついていますが、細菌感染で起こる急性膀胱炎とは異なり、多くの場合尿に異常を認めません。医療機関を受診すると症状から急性膀胱炎として抗生剤を処方されることが少なくありません。急性膀胱炎と紛らわしいのは、香辛料をとると症状が悪化し、水分を多く摂って尿をうすめると膀胱の痛みや不快感が改善するという共通点があることです。
しかし間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の場合はしばらくするとまた同様の症状が起ります。尿に異常がないにもかかわらず症状が治らないため、精神的なものが原因であると誤解されることも稀ではありません。
また頻尿が強い場合、過活動膀胱として通常は頻尿・尿失禁治療薬である抗コリン剤やβ3受容体刺激薬が処方されますが、多くの場合あまり効果がありません。逆に効果が無い場合は間質性膀胱炎が疑われると言ってもいいくらいです。

【どのように診断されるのでしょうか】

参考までに診断から治療までの流れの例を図3に示します。
まず上記のような症状と経過を十分お聞きして間質性膀胱炎を疑うところから始まります。良く似た症状をきたす他の疾患を除外する必要があるため、さまざまな問診票(図1)を参考にしたり、尿に細菌やがん細胞が出ていないか検査し、排尿の状態を排尿回数だけでなく1回の排尿量について排尿記録(図2)で確認します。排尿の状態を見るためには尿の勢いや残尿量を測ることも重要です。その他必要に応じて超音波検査や採血も行われますが、いずれも間質性膀胱炎を積極的に診断できる検査ではなく、あくまでも他の疾患でないことを確認するために行われます。
 
【間質性膀胱炎・膀胱痛症候群を積極的に診断できる検査】

膀胱鏡が重要です。ただし間質性膀胱炎の方は膀胱の知覚が過敏になっているため、通常以上に膀胱鏡で痛みを感じることが多く、外来での施行が難しい場合も少なくありません。最近では軟性膀胱鏡の普及により検査の苦痛がかなり軽減されていますので、むしろ積極的に膀胱鏡を施行すべきとの考えもあります。外尿道口の異常から膀胱癌などの他疾患の除外、ハンナ病変と呼ばれる粘膜の発赤の有無や、膀胱容量まで同時に確認できることは診断上大きな利点となります。
麻酔下での膀胱水圧拡張術により膀胱粘膜から五月雨状の出血(図3)を確認できれば間質性膀胱炎と診断され、同時に初期治療ができたことになります。正常では膀胱が膨らんでも出血することはありません。
尿流動態検査にて膀胱機能を精密検査すると、排尿に異常をきたすさまざまな疾患の診断ができます。膀胱の感覚が過敏になっている場合は間質性膀胱炎が強く疑われます。
 
【どのような治療があるのでしょうか】

膀胱水圧拡張術をすれば診断の確定と治療が同時にできます。2010年から健康保険適用になり(手術点数6,410点、64100円)患者負担が軽減されています。しかし水圧拡張術単独では約半数で再燃しますので、間質性膀胱炎の診断が確定したら食事面を含めた日常生活の注意と中等症以上では内服薬や膀胱内注入療法のような追加治療が重要になってきます。
生活上の注意としては以下の3点が最重要です。1)水分を十分(1日1.5ℓ目安)摂って尿を薄めること、2)コショウ、唐辛子、わさび、香辛料などの刺激性の食品を控えること、
3)可能な範囲で膀胱に尿をためる練習(膀胱訓練)をすること。他に食品としてはアルコール、カフェインの入った飲み物(コーヒー、紅茶、緑茶など)、柑橘系の果物や酢の物など日常の食品でも症状悪化の原因となるものがあります。許容摂取量や症状の出方には個人差もありますので、特定の食品をとった時に限って症状が悪化することがないかどうかをセルフチェックし、関係がありそうならしばらく摂取を控えて様子をみると良いでしょう。食事の影響で一時的に症状が悪化しても、基本的には水分を摂って尿を薄め、時間が経過すれば改善することが多いので悲観する必要はありません。
尿をためる練習は意外に難しく、尿を我慢すると症状が悪化する(昔から尿をがまんすると膀胱炎になるというのはこのことを指していた可能性がある)ので、我慢せずに早めに排尿してしまいがちです。しかし、症状の悪化は一時的なことであり、長い目でみると改善につながりますのでがんばりましょう。排尿の記録をつけて今ためられる量に50ml上乗せした量を目標値に設定し、徐々にためられる量を増やしていくと継続できる場合が多いようです。150mlためられるようになることが最低目標で、200ml以上ためられると普通の人と同じように生活できます。
膀胱内にハンナ病変がある重症の方では、病変部をレーザーや電気メスで焼くと疼痛が劇的に改善します。ハンナ病変かどうかの判定に迷うような微妙な発赤が見つかることもありますが、疑わしい場合は電気焼灼しておくことが推奨されます。ハンナ病変部は上皮内癌(CIS)との鑑別のため先ず生検し拡張前に電気焼灼します。焼灼前に拡張してしまうと病変部から滝状の出血が広範囲に起こり、視野が悪くなり病変部がわからなくなってしまうからです。
間質性膀胱炎の適応病名で健康保険に収載されている薬剤が無いため(現在内服薬の治験進行中です)が、抗アレルギー剤であるアイ・ピー・ディーや抗うつ薬であるトリプタノール、複数の漢方薬など間質性膀胱炎でも有効性が報告されているものを処方できます。痛みが強い方やハンナ型の方では、鎮痛剤やステロイドを一時的に使用することもあります。これらは単独で劇的な効果があるわけではありませんが、生活上の注意と並行して服用していただくと、数ヶ月後には日常生活の支障がなくなることも珍しくありません。
ハンナ型の場合には2021年4月に薬価収載された初めての間質性膀胱炎治療薬剤、DMSO(ジメチルスルホキシド、ジムソ®)を膀胱内に注入する方法があり、60-80%程度には効果が期待できます。2週間に1回、計6回カテーテルを使用して膀胱内に注入する治療法で、注入後すぐは刺激があるので当日や翌日は症状が悪化することが多いですが、3-4回くらい注入する頃から楽になる方が多いようです。

【以下のような症状をお持ちの方は泌尿器科にご相談ください】

膀胱炎を反復する。
膀胱炎が治りにくい。
頑固な頻尿で薬を飲んでも治らない。
膀胱炎のような症状だが、病院へ行っても尿に異常がないといわれた。
尿がたまると下腹部が痛い。
排尿してもすぐまた行きたくなる。
いつもトイレのことが気になる。
排尿時や排尿後に下腹部や尿の出口付近が痛い。
性交時に痛みがある。
夜に何回もトイレに起きる。

【難病指定について】

ハンナ型の間質性膀胱炎で以下の条件を満たす方については難病指定が受けられます。詳細は厚生労働省のホームページにありますので、ご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000101077.pdf

 
 
 
 図3 診断から治療まで(原三信病院の例)
参考資料 間質性膀胱炎診療ガイドライン
2024年9月更新
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