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【はじめに】
目で見て明らかな血尿に気づいた時、多くの方が『悪い病気ではないか』と心配され来院されます。一方、血尿が出ても『疲れのせいだ』と放置してしまう方もおられます。また、病院や健康診断で尿検査を行い、初めて尿に血液が混入していることがわかる場合があります。この時、何の症状もない場合がほとんどですから、『大した血尿でもないのに病院に行く必要があるのか』と考える方もいらっしゃると思います。
ここでは血尿を契機に発見される病気の種類と検査の必要性を述べさせて頂きます。この文章を読むことで、血尿でお悩みの方が病院で気軽に相談して頂くきっかけになれば幸いです。 |
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【血尿の分類】
まず目で見てわかる血尿かどうか、症状があるかないかで分類します。
1)何らかの症状がある:症候性肉眼的血尿
痛み、頻尿など何らかの症状があり、目で見て血尿がわかる状態です。尿1000mlに血液1ml以上の混入があると目で見て赤いと認識できます。多くは尿路結石、尿路感染症などの良性疾患ですが、局所症状を伴った尿路悪性腫瘍(がん)も念頭に置く必要があります。
《症状別疾患》 腰背部痛:尿路結石、腎盂腎炎
頻尿・排尿時痛:膀胱炎・尿道炎、前立腺炎
発熱:腎盂腎炎、前立腺炎、精巣上体炎
浮腫:腎機能障害、ネフローゼ症候群
排尿障害:前立腺肥大症、膀胱腫瘍、膀胱結石、尿道狭窄、神経因性膀胱
2)自覚症状がない:無症候性肉眼的血尿
痛みや頻尿など症状がなく血尿だけが症状の場合です。尿路悪性腫瘍(がん)が20%強の症例で認められ、その多くは膀胱がんです。悪性腫瘍以外には腎血管の異常も念頭に置いて検査をする必要があります。
3)目で見えない血尿:顕微鏡的血尿:
症状がなく、目で見て尿の色は正常ですが、顕微鏡で観察して赤血球が認められる状態です。男性では35%、女性では10%が原因不明で、尿路悪性腫瘍は2.2〜12.5%に認められます。
【原 因】
大きく内科的疾患と泌尿器科的疾患の二つに分けられます。
血尿の原因は良性から悪性まで様々であり、尿路のいずれの部位からでも起こります。
腎臓は血液を浄化して体に余分な水分と毒素を尿として排泄します。浄化された血液は体の中に返されます。簡単にいうと腎臓は血管のかたまりで血液が充満している臓器と思って下さい。
内科的疾患とは、腎臓から血液がもれだす糸球体腎炎や血が止まりにくくなる血液疾患、薬剤関与などがあげられます。この場合、泌尿器科よりは腎臓内科を受診いただき、タンパク尿の有無や採血結果から、必要に応じて腎生検まで行うことがあります。
泌尿器科的疾患で症状を伴うものは膀胱炎や尿路結石等の良性疾患がほとんどです。しかし絶対見落としてはならないのが悪性腫瘍:がんです。血尿=がんというわけではありませんが、早期のがんはほとんどが無症状なので唯一の所見である血尿で発見するためには検査が必要です。
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【検査】
通常、身体に負担の少ない検査から順に行っています。
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尿検査:尿定性、尿沈渣、尿細胞診があります。どちらの検査も1回だけで判定するのではなく、できれば3回以上行って判断するのが良いと考えます。 |
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画像診断:超音波検査、腎・膀胱の単純X線撮影、造影剤を静脈から注入して行う経静脈性腎盂造影となどがあります。必要に応じてCT・MRIまで行うこともあります。 |
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B |
膀胱鏡検査:肉眼的血尿の方には必須の検査です。膀胱がん発生のリスクが高い喫煙者、男性、放射線治療の既往のある方等もぜひ施行すべきと考えます。 |
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【注意点と考え方】
みなさん痛みや発熱等の症状があれば日常生活に影響がでるため、すぐに病院を受診されます。しかし血尿だけの場合は尿が出にくい、貧血になるなど程度が強い場合以外はほとんど日常生活に支障がありません。結果、受診するのが遅れたり何年も放置したりしてしまう方が時々いらっしゃいます.私たち泌尿器科は症状の無い血尿患者を診た場合、まず尿路悪性腫瘍(がん)を疑います。また血尿の程度と疾患の種類は関係ありません。肉眼的血尿を自覚した方、健診で潜血尿を指摘された方、泌尿器科ではなくかかりつけ医でも構いませんので、まず検尿を行い結果に応じて専門的な判断をしてもらうことをお勧めします。
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